科学研究費助成事業(科研費)とは、学術研究の発展を目的とした競争的研究費のことです🔬
この記事は「科研費って何?」という基本的な解説ではなく、私が科研費を取得中に 2回の産休・育休 を経験した際の体験をまとめた覚え書きです👩🏻🔬
当時、「産休・育休中の科研費はどう扱えばいいの?」という情報を探すのに、特に産後は時間も余裕もなく苦労しました。
同じように調べている方の参考になればと思い、2025年時点での制度内容を記録しておきます。
制度は今後変更される可能性がありますので、実際に申請・手続きをされる際は必ず最新の公式情報をご確認ください。あくまでも2025年時点の制度の内容ですので、この記事は参考までに、科研費の情報をしっかりと確認してください。
*この記事は、以下の基金分についてのみ記載しています。以下に含まれない基金、補助金については確認しておりませんので、ご了承ください。
対象:「基盤研究(B・C)」、「挑戦的研究(開拓・萌芽)」、「若手研究」、「若手研究(B)」(平成29(2017)年度以前に採択された研究課題)、「研究活動スタート支援」、「特別研究促進費」、「国際共同研究加速基金(国際先導研究、国際共同研究強化、海外連携研究、国際共同研究強化(A・B)、帰国発展研究)」
また、研究を実施する施設によっても細かなルールが異なる場合があるかもしれませんので、所属機関担当者に確認をしてください。
基本ルール
- 科研費(基金分)は、複数年度にわたる研究費として使用が可能
- 産休、育休に伴って研究を中断する場合であっても、研究費は返納せずに研究機関で管理することになる
中断(使用ルール総則3-11)
- 育休等を取得することにより、1年を超えて中断する場合には、様式Fー13ー1「研究中断届」により届け出る必要がある(1年未満の場合は、届出は不要)
- 中断にあたり、未使用の助成金がある場合には、再開までの間、所属する研究機関において適切に管理する
- 中断中であっても、様式Fー2ー1「支払い請求書」(各年度の3月1日まで)や、様式Fー6ー1「実施状況報告書」(翌年度の5月31日まで)は提出する必要がある(国際共同研究加速基金を除く)。提出が困難な場合には所属機関を経由して日本学術振興会に連絡する(「様式Fー13ー1作成上の注意」より)
- 研究再開予定年月日に変更がある場合は、再度「研究中断届」を提出する必要がある(「様式Fー13ー1作成上の注意」より)
- 産休または育休の終了後、1年を超えて継続して実施できなくなる場合には、補助事業を廃止しなければならないので注意。
- 再開時は、留保していた研究費を使用できるほか、必要な研究費の支払請求を行うことができる
延長(使用ルール総則3-12)
- 育休等の取得により、期間の延長を希望する場合には、様式Fー13ー2「産前産後の休暇又は育児休業の取得に伴う補助事業期間延長承認申請書」を提出し、承認を得る必要がある
- 研究の再開予定が補助事業期間終了後の場合は、当初の期間内に提出する必要がある(「様式Fー13ー2作成上の注意」より
| 中断期間 | 延長可能期間 | 
|---|---|
| 〜1年以内 | 1年度 | 
| 〜2年以内 | 2年度 | 
| 〜3年以内 | 3年度 | 
育休中に研究費を使用したい場合
- 育休中に、研究中断制度を利用しない場合、法令や所属機関の規定等の範囲内で科研費の事業を継続し、研究費の執行を行うことは可能。(科研費FAQ52062)
- 動植物の維持などで、研究費の執行を希望する場合には、研究機関において部局長等に届け出たうえで、研究費の執行や管理事務について、研究分担者や当該補助事業にて雇用されている研究協力者に委任する等の対応をとることで、研究費を継続して執行することが可能。(科研費FAQ52062)
- ただし、バイアウト経費の支出はNG。(*研究代表者(又は研究分担者)は中断中には研究課題を実施していないため)。(科研費FAQ44812)
⇒研究機関がルールを定めてくれていれば可能だが、なかなか進んでいないのが現状のよう・・
科研費の申請
- 産休中、育休中であっても、新たな研究費の申請は問題なく可能
*産後は、なかなか落ち着いてパソコンに向かうのが難しいのと、頭もポヤポヤして文章を書くのが大変なので、申請の予定がある場合は、出産前にある程度申請書を仕上げておくのがオススメです🤣
その他
- 令和6年の公募から、「研究活動スタート支援」「若手研究」の応募要件において、「未就学児の養育期間」を配慮期間として追加された。男性も女性も対象、博士号取得後に子供1人を養育した場合は最大6年間が配慮期間となる。就業期間は問わず、育休を取得していない期間も含まれる(科研費FAQ2111)。証明書類の提出は不要で、所属機関でルールを定める(科研費FAQ2112)
ひとりごと
社会の変化に伴い、いろいろな研究費制度が子育てする研究者にとって利用しやすい柔軟な仕組みに変化してきており、選択の幅が広がったことをありがたく感じています。
しかし、私のまわりでは「研究を最優先するのが当たり前」という空気を感じることがあります。
もちろん、それほど研究を大切に思う気持ちはとても尊いし、研究者として自然なことだと思います。
ただ同時に、私のように「子どもが小さいうちは育児にもしっかり向き合いたい」と感じる人が、その気持ちを安心して口にできる環境がもっと広がってほしい――そう願っています。
研究に打ち込みたい人も、育児の時間を大切にしたい人も、それぞれの選択が当たり前に尊重される。そんなふうに、研究者の働き方や生き方がもっと多様に認められる社会になっていくといいなと思います😊
